第1問
2次の正方行列A0、A1、A2、A3、・・・・を
A0=O 、 An=B+An-1C (n=1,2,3,・・・)
で定める。ただし、Oは2次の零行列、BとCは2次の正方行列とする。
(1) An(E-C)をBとCを用いて表せ。ここでEは2次の単位行列とする。
(2) BとCを
$\small\sf{\begin{align*} \sf B=\begin{pmatrix}\sf 0 &\sf 1\\ \sf 1 &\sf 0\end{pmatrix}\ \ ,\ \ C=\begin{pmatrix}\sf 1 &\sf 3\\ \sf -1 &\sf 1\end{pmatrix}\end{align*}}$
とするとき、A3nを求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
An=B+An-1C ・・・・① の両辺に右からCをかけると、
AnC=BC+An-1C2 ・・・・②
①-②より
An-AnC=B-BC+An-1C-An-1C2
⇔ An(E-C)-B={An-1(E-C)-B}C
ここで、Xn=An(E-C)-Bとおくと、
X0=A0(E-C)-B=-B
Xn=Xn-1C ・・・・(※)
(※)は任意の自然数nに対して成り立つので、
Xn-1=Xn-2C 、 Xn-2=Xn-3C 、・・・、X2=X1C 、 X1=X0C
これらを順次、(※)に代入していくと
Xn=Xn-1C
=Xn-2C2
=Xn-3C3
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \vdots\end{align*}}$
=X0Cn
すなわち、An(E-C)-B=-BCn
⇔ An(E-C)=B(E-Cn)
隣接二項間の漸化式風に解いてみましたが、
一般項を類推して帰納法で証明というのでもOKでしょう。
(2)
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf C=\begin{pmatrix}\sf 1 &\sf 3\\ \sf -1 &\sf 1\end{pmatrix}\end{align*}}$ に対して、ハミルトン・ケーリーの定理より、
C2=2C-4E
よって、C3=C2C
=(2C-4E)C
=2C2-4C
=2(2C-4E)-4C
=-8E
これと(1)より、
A3n(E-C)=B(E-C3n)
=B{E-(-8E)n}
={1-(-8)n}B ・・・・③
ここで、$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf E-C=\begin{pmatrix}\sf 0&\sf -3\\ \sf 1&\sf 0\end{pmatrix}\end{align*}}$ のデターミナントは、
det(E-C)=3≠0となり、逆行列(E-C)-1が存在する。
よって、③の両辺に右から(E-C)-1をかけると、
A3n={1-(-8)n}B(E-C)-1
これを成分計算をすると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A_{3n}=\{ 1-(-8)^n\}\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 1 \\ \sf 1 & \sf 0 \end{pmatrix}\ \times\frac{1}{3}\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 3 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\underline{\ \frac{ 1-(-8)^n}{3}\ \begin{pmatrix} \sf -1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf 3 \end{pmatrix}\ \ }\end{align*}}$
C3がきれいになるので、あとは計算するだけです。
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- 2011/11/26(土) 23:57:00|
- 大学入試(数学) .関西の国立大学 .大阪大 理系 2008
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第1問
点Oで交わる2つの半直線OX、OYがあって、∠XOY=60°とする。
2点A、BがOX上にO、A、Bの順に、2点C、DがOY上にO、C、Dの
順に並んでいるとして、線分ACの中点をM、線分BDの中点をNとする。
線分ABの長さをs、線分CDの長さをtとするとき、以下の問いに答えよ。
(1) 線分MNの長さをsとtを用いて表せ。
(2) 点A、BとC、Dが$\small\sf{\sf s^2+t^2=1}$ を満たしながら動くとき、線分MNの長さ
の最大値を求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
xy平面上の原点をOとし、x軸上に2点A、Bを
$\scriptsize\sf{\sf A(a,\ 0)\ ,\ B(a+s,\ 0)\ \ (a\gt 0)}$
のようにとる。
また、半直線 $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf y=\sqrt3\ x\ \ (x\geqq 0) \end{align*}}$ はx軸正方向と60°の角をなすので、
この半直線上の2点C、Dを
$\scriptsize\sf{\sf C(c,\ \sqrt3\ c)\ ,\ \ D(d,\ \sqrt3\ d)\ \ (0\gt c\gt d)}$
とすると、$\scriptsize\sf{\sf CD=t}$ より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf CD^2=(d-c)^2+\left(\sqrt3\ d-\sqrt3\ c\right)^2=t^2" \end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \Leftrightarrow\ \ 4(d-c)^2=t^2" \end{align*}}$
ここで、t>0かつc<dより、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf d=c+\frac{t}{2}\end{align*}}$
よって、点Dの座標は
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D\left(c+\frac{t}{2}\ ,\ \sqrt3\ c+\frac{\sqrt3\ t}{2}\right)\end{align*}}$
M、Nはそれぞれ線分AB、CDの中点なので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf M\left(\frac{a+c}{2}\ ,\ \frac{\sqrt3}{2}\ c\right)\ \ ,\ \ N\left(\frac{a+c}{2}+\frac{s}{2}+\frac{t}{4}\ ,\ \frac{\sqrt3}{2}c+\frac{\sqrt3}{4}\ t\right)\end{align*}}$
よって、MNの長さは
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf MN=\sqrt{\left(\frac{s}{2}+\frac{t}{4}\right)^2+\left(\frac{\sqrt3}{4}\ t\right)^2}=\underline{\ \frac{1}{2}\sqrt{s^2+t^2+st}\ \ }\end{align*}}$
ベクトルで計算してもいいと思います。
計算量はどっちでも同じぐらいですかね。
(2)
$\scriptsize\sf{\sf s^2+t^2=1}$ ・・・①より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf MN=\frac{1}{2}\sqrt{1+st}\end{align*}}$ ・・・・②
s、t>0より相加・相乗平均の関係を用いると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{s^2+t^2}{2}\geqq \sqrt{s^2\ t^2}\ \ \Leftrightarrow\ \ s\ t\ \leqq \frac{1}{2}\end{align*}}$
これと②より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf MN\leqq \frac{1}{2}\sqrt{1+\frac{1}{2}}=\frac{\sqrt6}{4}\end{align*}}$
よって、MNの最大値は、$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{\sqrt6}{4}\end{align*}}$ となる。
相加・相乗平均に気づけば楽ですね。
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- 2011/11/27(日) 23:57:00|
- 大学入試(数学) .関西の国立大学 .大阪大 理系 2008
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第4問
tを負の実数とし、xy平面上で曲線y=22x+2tと曲線y=2x+3tおよび
y軸で囲まれる部分をDとする。
(1) Dをx軸のまわりに1回転させてできる回転体の体積V(t)を求めよ。
(2) tが負の実数の範囲を動くとき、V(t)の最大値を求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
C1: y=22x+2t 、 C2: y=2x+3t とおく。
C1とC2の交点のx座標は、
$\scriptsize\sf{\sf 2^{2x+2t}=2^{x+3t}}$
⇔ $\scriptsize\sf{\sf 2x+2t=x+3t}$
⇔ $\scriptsize\sf{\sf x=t}$
t<x<0の範囲で常に
$\scriptsize\sf{\sf 2^{2x+2t}-2^{x+3t}=2^{x+2t} (2^{x}-2^)\gt 0}$
が成り立つので、この範囲ではC1はC2の上側にある。
よって、領域Dを図示すると右図のようになる。
求める体積V(t)は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf V\ (t)=\pi\int_t^0 \left(2^{2x+2t}\right)^2dx-\pi\int_t^0 \left(2^{x+3t}\right)^2dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\pi\int_t^0 \left(2^{4x+4t}-2^{2x+6t}\right)\ dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\pi\left[ \ \frac{2^{4x+4t}}{4\log2}-\frac{2^{2x+6t}}{2\log 2}\ \right]_t^0\end{align*}}$
これを計算すると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf V\ (t)=\underline{\ \frac{\pi}{4log 2}\left( \ 2^{8t}-2^{6t+1}+2^{4t}\ \right)\ \ }\end{align*}}$
まぁこれは簡単ですね。
(2)
$\scriptsize\sf{\sf T=2^{2t}}$ とおくと、t<0より、0<T<1 ・・・①
また、(1)より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf V\ (t)=\frac{\pi}{4log 2}\left( \ T^{4}-2T^{3}+T^{2}\ \right)\end{align*}}$
となるので、$\scriptsize\sf{\sf f(T)=T^4-2T^3+T^2}$ とおくと、
$\scriptsize\sf{\sf f'(T)=4T^3-6T^2+2T}$
$\scriptsize\sf{\sf =2T(T-1)(2T-1)}$
①の範囲で増減表を書くと、下の通りになる。
T | (0) | ・・・ | $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\end{align*}}$ | ・・・ | (1) |
f’(T) | (0) | + | 0 | - | (0) |
f(T) | (0) | ↗ | $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{16}\end{align*}}$ | ↘ | (0) |
増減表より、$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf T=2^{2t}=\frac{1}{2}\end{align*}}$ で、f(T)は最大 $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{16}\end{align*}}$
よって、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf t=-\frac{1}{2}\end{align*}}$ のとき、V(t)は最大 $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{\pi}{64\log 2}\end{align*}}$
これを間違えると、ちょっと合格は厳しいでしょうね・・・・
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- 2011/11/29(火) 23:57:00|
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第5問
1枚の硬貨を繰り返し投げる反復試行を行い、表が500回続けて出たときに
終わるものとする。nを500以上の自然数とするとき、この反復試行がn回目
で終わる確率をp(n)とする。
(1) 501≦n≦1000のとき、p(n)はnに関係なく一定の値になることを示し、
またその値を求めよ。
(2) p(1002)-p(1001)の値を求めよ。
(3) 1002≦n≦1500のとき、p(n+1)-p(n)の値を求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
n回目の試行で終わるためには、n-499回目から500回連続して
表が出続ければよい。
そのためには、n-500回目は裏が出る必要がある。
n≦1000より、n-501≦499なので、1回目からn-501回目に
表が500回続けて出ることはあり得ない。
よって、求める確率p(n)は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(n)=\frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\underline{\ \left(\frac{1}{2}\right)^{501}\ \ }\end{align*}}$
後ろから順にさかのぼっていけばOKですね。
(2)
p(1001)について
502~1001回目は500回連続して表が出る。
501回目は裏。
1~500回目は、表が500回続けて出なければよい。
よって、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(1001)=\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}\bigg)\times\frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}\bigg)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
p(1002)について
503~1002回目は500回連続して表が出る。
502回目は裏。
1~501回目に、表が500回以上続けて出なければよい。
・1回目から表が500回続けて出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \left(\frac{1}{2}\right)^{500}\end{align*}}$
・1回目に裏が出て、2回目から表が500回続けて出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
よって、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(1002)=\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}-\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\bigg)\times\frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}-\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\bigg)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
以上より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(1002)-p(1001)=-\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{501}=\underline{\ \ -\left(\frac{1}{2}\right)^{1002}\ \ }\end{align*}}$
少しだけ条件が増えます。
(3)
p(n)について
n-499~n回目は500回連続して表が出る。
n-500回目は裏。
1~n-501回目に、表が500回以上続けて出なければよい。
・1回目から表が500回出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \left(\frac{1}{2}\right)^{500}\end{align*}}$
・1回目に裏が出て、2回目から表が500回続けて出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
・2回目に裏が出て、3回目から表が500回続けて出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
・3回目に裏が出て、4回目から表が500回続けて出る確率は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \vdots\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \vdots\end{align*}}$
・n-1001回目に裏が出て、n-1000回目から表が500回出る確率は、
(n-1001≦499より、1~n-1001回目に表が500回出ることはない))
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}=\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
よって、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(n)=\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}-(n-1001)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\bigg)\times\frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{500}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}-(n-1001)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\bigg)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
同様に考えると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(n+1)=\bigg(1-\left(\frac{1}{2}\right)^{500}-(n-1000)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\bigg)\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\end{align*}}$
以上より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf p(n+1)-p(n)=-\left(\frac{1}{2}\right)^{501}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{501}=\underline{\ \ -\left(\frac{1}{2}\right)^{1002}\ \ }\end{align*}}$
(2)と同じように求めればOKですね。
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- 2011/11/30(水) 23:57:00|
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