第1問
以下の各問いに答えよ。
(1) 実数$\small\sf{\alpha,\beta}$ が$\small\sf{\begin{align*}\sf 0\lt \alpha\lt \frac{\pi}{2}\ ,\ 0\lt \beta\lt\frac{\pi}{2}\end{align*}}$ 、$\small\sf{\tan\alpha\ \tan\beta=1}$を
満たすとき、$\small\sf{\alpha+\beta}$ の値を求めよ。
(2) 実数$\small\sf{\sf\alpha,\beta,\gamma}$ が$\small\sf{\begin{align*} \sf 0\lt \alpha\lt \frac{\pi}{2}\ ,\ 0\lt\beta\lt \frac{\pi}{2}\ ,\ 0\lt\gamma\lt\frac{\pi}{2}\end{align*}}$ 、
$\small\sf{\begin{align*} \sf \alpha+\beta+\gamma=\frac{\pi}{2}\end{align*}}$ を満たすとき、
$\small\sf{\tan\alpha\ \tan\beta+\tan\beta\ \tan\gamma+\tan\gamma\ \tan\alpha}$
の値を求めよ。
(3) 実数$\small\sf{\alpha,\beta,\gamma}$ が$\small\sf{\begin{align*} \sf 0\lt\alpha\lt\frac{\pi}{2}\ ,\ 0\lt\beta\lt\frac{\pi}{2}\ ,\ 0\lt \gamma\lt\frac{\pi}{2}\end{align*}}$ 、
$\small\sf{\begin{align*} \sf \alpha+\beta+\gamma=\frac{\pi}{2}\end{align*}}$ を満たすとき、
$\small\sf{\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma}$
のとりうる値の範囲を求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
与式より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \tan\beta=\frac{1}{\tan\alpha}=\tan\left(\frac{\pi}{2}-\alpha\right)\end{align*}}$
となり、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf 0<\frac{\pi}{2}-\alpha<\frac{\pi}{2}\ \ ,\ \ 0<\beta<\frac{\pi}{2}\end{align*}}$
なので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \beta=\frac{\pi}{2}-\alpha\ \ \Leftrightarrow\ \ \underline{\ \alpha+\beta=\frac{\pi}{2}\ }\end{align*}}$ .
(2)
与えられた条件より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \tan\gamma=\tan\left(\frac{\pi}{2}-\alpha-\beta\right)\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{\tan\left(\alpha+\beta\right)}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1-\tan\alpha\tan\beta}{\tan\alpha+\tan\beta}\end{align*}}$ ←tanの加法定理
となるので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \tan\alpha\tan\beta+\tan\beta\tan\gamma+\tan\gamma\tan\alpha\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\tan\alpha\tan\beta+\left(\tan\alpha+\tan\beta\right)\tan\gamma\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\tan\alpha\tan\beta+\left(\tan\alpha+\tan\beta\right)\cdot\frac{1-\tan\alpha\tan\beta}{\tan\alpha+\tan\beta}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\tan\alpha\tan\beta+1-\tan\alpha\tan\beta\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\underline{\ 1\ }\end{align*}}$
(3)
$\scriptsize\sf{A=\tan\alpha\ ,\ B=\tan\beta\ ,\ C=\tan\gamma}$ とおくと、
(2)より
AB+BC+CA=2
なので、
(A+B+C)2=A2+B2+C2+2(AB+BC+CA)
=A2+B2+C2+2 ・・・・①
また、コーシー・シュワルツの不等式より
(1・A+1・B+1・C)2≦(12+12+12)(A2+B2+C2)
⇔ (A+B+C)2≦3(A2+B2++C2)
⇔ (A+B+C)2≦3{(A+B+C)2-2} ←①より
⇔ (A+B+C)2≧3
⇔ A+B+C≧$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \sqrt3\end{align*}}$ .
等号成立は、
A=B=C すなわち $\scriptsize\sf{\alpha}$ =$\scriptsize\sf{\beta}$ =$\scriptsize\sf{\gamma}$ =$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{\pi}{6}\end{align*}}$ のときである。
一方、$\scriptsize\sf{\alpha}$ →+0、$\scriptsize\sf{\beta}$ →+0とすると、$\scriptsize\sf{\gamma}$ →$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{\pi}{2}-0\end{align*}}$ となり、
このとき、A→0、B→0、C→+∞ なので、
A+B+C→+∞
となる。
以上より、$\scriptsize\sf{\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma}$ のとり得る値の範囲は、
$\scriptsize\sf{\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma\geqq \sqrt3}$
である。
コーシー・シュワルツは思いつきますかね?
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第2問
2次正方行列 $\small\sf{\begin{align*} \sf \begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf c & \sf d \end{pmatrix}\end{align*}}$ のうち、次の3条件(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)を満たす
もの全体の集合をMとする。
(ⅰ)a、b、c、dは全て整数
(ⅱ)b+c=0
(ⅲ)a-b-d=0
またEを2次単位行列とする。このとき以下の各問いに答えよ。
(1) 行列A、BがともにMの要素であるとき、それらの積ABもMの要素
であることを示せ。
(2) 行列A= $\small\sf{\begin{align*} \sf \begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf c & \sf d \end{pmatrix}\end{align*}}$ とその逆行列A-1がともにMの要素であるとき、
ad-bc=1が成立することを示せ。
(3) 行列Aとその逆行列A-1がともにMの要素であるようなAをすべて
求めよ。
(4) 自然数nについて、Mの要素であってAn=Eを満たすような行列A
の全体の集合をSnとする。Snの要素の個数がちょうど3となるnを
すべて求めよ。
--------------------------------------------
【解答】
行列 $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf c & \sf d \end{pmatrix}\end{align*}}$ がMの要素であるとき、
(ⅱ)、(ⅲ)より、c=-b かつ d=a-b となるので、
整数a、bを用いて、 $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf -b & \sf a-b \end{pmatrix}\end{align*}}$ と表せる。
(1)
a、b、x、yを整数として、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf -b & \sf a-b \end{pmatrix}\ \ ,\ \ B=\begin{pmatrix} \sf x&\sf y \\ \sf -y & \sf x-y \end{pmatrix}\end{align*}}$
とおくと、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf AB=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf -b & \sf a-b \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf x&\sf y \\ \sf -y & \sf x-y \end{pmatrix}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\begin{pmatrix} \sf ax-by&\sf ay+b(x-y) \\ \sf -bx-(a-b)y & \sf -by+(a-b)(x-y) \end{pmatrix}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\begin{pmatrix} \sf ax-by&\sf bx+(a-b)y \\ \sf -bx-(a-b)y & \sf (a-b)x-ay \end{pmatrix}\end{align*}}$ .
各成分は整数となるので、ABは条件(ⅰ)を満たす。
また、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \{bx+(a-b)y\}-\{-bx-(a-b)y\}=0\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf (ax-by)-\{bx+(a-b)y\}-\{(a-b)x-ay\}=0\end{align*}}$
となるので、ABは条件(ⅱ)、(ⅲ)も満たす。
以上より、ABはMの要素となるので、題意は示された。
(2)
a、b、c、dを整数とする。Mの要素である
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf c & \sf d \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf -b & \sf a-b \end{pmatrix}\end{align*}}$
に対して、AのデターミナントをDとおくと、
A-1が存在するのでD≠0であり、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D=ad-bc=a(a-b)+b^2=a^2-ab+b^2\end{align*}}$ ・・・・①
このとき、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^{-1}=\frac{1}{D}\begin{pmatrix} \sf a-b&\sf -b \\ \sf b & \sf a \end{pmatrix}\end{align*}}$
であり、条件(ⅰ)より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{a}{D}=s\ \ ,\ \ \frac{b}{D}=t\ \ \Leftrightarrow\ \ a=Ds\ \ ,\ \ b=Dt\end{align*}}$
となる整数s、tが存在する。
これらを①に代入すると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D=D^2s^2-D^2st+D^2t^2\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \ \ \Leftrightarrow\ \ s^2-st+t^2=\frac{1}{D}\ \ \ \ \ (\because D\ne 0)\end{align*}}$
となり、s2-st+t2は整数なので、D=±1である。
ここで、①より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D=\left(a-\frac{b}{2}\right)^2+\frac{3b^2}{4}\geqq 0\end{align*}}$
なので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D=ad-bc=1\end{align*}}$
となり、題意を満たす。
(3)
Mの要素である $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf a&\sf b \\ \sf -b & \sf a-b \end{pmatrix}\end{align*}}$ に対して、(2)より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf D=a^2-ab+b^2=1\ \ \Leftrightarrow\ \ a^2-ab+b^2-1=0\end{align*}}$ ・・・・②
aが整数になるためには、少なくとも②が実数解をもつ
必要があるので、②の判別式を考えると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf b^2-4(b^2-1)\geqq 0\ \ \Leftrightarrow\ \ -\frac{2}{\sqrt3}\leqq b\leqq\frac{2}{\sqrt3}\end{align*}}$
となり、bは整数なので、b=0,±1である。
・ b=0のとき、②より
a2-1=0 ⇔ a=±1
・ b=-1のとき、②より
a2+a=0 ⇔ a=0,-1
・ b=1のとき、②より
a2-a=0 ⇔ a=0,1
以上より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\underline{\ \pm\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf 1 \end{pmatrix}\ \ ,\ \ \pm\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\ \ ,\ \ \pm\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}\ }\end{align*}}$
(4)
(1)より、AがMの要素であるとき、A2=AAもMの要素である。
以下、帰納的に、A3=A2A、 A4=A3A、 ・・・・、AnもMの要素
となる。
一方、題意より
An=An-1A=E ⇔ A-1=An-1
なので、A-1もMの要素である。
よって、Mの要素Aとして、(3)で求めた6つを考えればよい。
(ア) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf 1 \end{pmatrix}=E\end{align*}}$ のとき
任意のnに対してAn=Eとなる。
(イ) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=-\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf 1 \end{pmatrix}=-E\end{align*}}$ のとき
An=Eとなるのは、n=2k(k:自然数)のとき。
(ウ) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\end{align*}}$ のとき
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^2=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sf -1&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 0 \end{pmatrix}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^3=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf -1&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sf -1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf -1 \end{pmatrix}=-E\end{align*}}$
より、An=Eとなるのは、n=6k(k:自然数)のとき。
(エ) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=-\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\end{align*}}$ のとき
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^2=\begin{pmatrix} \sf -1&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 0 \end{pmatrix}\ \ ,\ \ A^3=-\begin{pmatrix} \sf 0&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf -1&\sf -1 \\ \sf 1 & \sf 0 \end{pmatrix}=E\end{align*}}$
より、An=Eとなるのは、n=3k(k:自然数)のとき。
(オ) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}\end{align*}}$ のとき
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^2=\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf -1 \end{pmatrix}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^3=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sf -1&\sf 0 \\ \sf 0 & \sf -1 \end{pmatrix}=-E\end{align*}}$
より、An=Eとなるのは、n=6k(k:自然数)のとき。
(カ) $\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A=-\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}\end{align*}}$ のとき
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf A^2=\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf -1 \end{pmatrix}\ \ ,\ \ A^3=-\begin{pmatrix} \sf 0&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sf 1&\sf 1 \\ \sf -1 & \sf 0 \end{pmatrix}=E\end{align*}}$
より、An=Eとなるのは、n=3k(k:自然数)のとき。
以上より、kを自然数として、
(ⅰ) n=6kのとき
(ア)~(カ)のすべての場合でAn=Eとなり、
Snの要素の個数は6個
(ⅱ) n=6k-5のとき
(ア)の場合のみAn=Eとなり、
Snの要素の個数は1個
(ⅲ) n=6k-4のとき
(ア)、(イ)の場合にAn=Eとなり、
Snの要素の個数は2個
(ⅳ) n=6k-3のとき
(ア)、(エ)、(オ)の場合にAn=Eとなり、
Snの要素の個数は3個
(ⅴ) n=6k-2のとき
(ア)、(イ)の場合にAn=Eとなり、
Snの要素の個数は2個
(ⅵ) n=6k-1のとき
(ア)の場合のみAn=Eとなり、
Snの要素の個数は1個
よって、求めるnの値は、
n=6k-3 (k:自然数)
である。
うまく(3)に持ち込みましょう。
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第3問
m、nを自然数として、関数f(x)=xm(1-x)nを考える。このとき
以下の各問いに答えよ。
(1) 0≦x≦1におけるf(x)の最大値をm、nを用いて表せ。
(2) 定積分$\small\sf{\begin{align*} \sf \int_0^1f\ (x)dx\end{align*}}$ をm、nを用いて表せ。
(3) a、b、cを実数として、関数g(x)=ax2+bx+cの0≦x≦1に
おける最大値をM(a,b,c)とする。2つの条件(ⅰ)、(ⅱ)が成立
するとき、M(a,b,c)の最小値をm、nを用いて表せ。
(ⅰ) g(0)=g(1)=0
(ⅱ) 0<x<1のときf(x)≦g(x)
(4) m、nが2以上の自然数でm>nであるとき
$\small\sf{\begin{align*} \sf \frac{(m+n+1)!}{m!\ n!}>\frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n}>2^{2n-1}\end{align*}}$
が成立することを示せ。
--------------------------------------------
【解答】
(1)
f(x)を微分すると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf f\ '(x)=mx^{m-1}(1-x)^n+x^m\cdot n(1-x)^{n-1}\cdot(-1)\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =x^{m-1}(1-x)^{n-1}\left\{m(1-x)-nx\right\}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =-x^{m-1}(1-x)^{n-1}\left\{(m+n)x-m\right\}\end{align*}}$
となるので、0≦x≦1におけるf(x)の増減は次のようになる。
よって、f(x)の最大値は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf f\ (x)_{max}=f\left(\frac{m}{m+n}\right)\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\left(\frac{m}{m+n}\right)^m\left(1-\frac{m}{m+n}\right)^n\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\underline{\ \frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\ }\end{align*}}$
である。
(2)
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m,n}=\int_0^1\ f\ (x)\ dx\end{align*}}$
とおくと、部分積分法より、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m,n}=\left[\frac{1}{m+n}x^{m+1}(1-x)^n\right]_0^1-\frac{1}{m+n}\int_0^1x^{m+1}\cdot n(1-x)^{n-1}\cdot (-1)\ dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{n}{m+n}\int_0^1x^{m+1}(1-x)^{n-1}\ dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \ \ \Leftrightarrow\ \ I_{m,n}=\frac{n}{m+n}\ I_{m+1,n-1}\end{align*}}$ .
同様に、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m+1,n-1}=\frac{n-1}{m+2}\ I_{m+2,n-2}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m+2,n-2}=\frac{n-2}{m+3}\ I_{m+3,n-3}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \vdots\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m+n-2,2}=\frac{2}{m+n-1} \ I_{m+n-1,1}\end{align*}}$
であり、これらを辺々かけると
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m,n}=\frac{n}{m+1}\cdot\frac{n-1}{m+2}\cdot\frac{n-2}{m+3}\cdot \ldots \cdot\frac{2}{m+n-1} \ I_{m+n-1,1}\end{align*}}$ .
ここで、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m+n-1,1}=\int_0^1x^{m+n-1}(1-x)\ dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\left[\frac{x^{m+n}}{m+n}-\frac{x^{m+n+1}}{m+n+1}\right]_0^1\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{m+n}-\frac{1}{m+n+1}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{(m+n)(m+n+1)}\end{align*}}$
なので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf I_{m,n}=\frac{n}{m+1}\cdot\frac{n-1}{m+2}\cdot\frac{n-2}{m+3}\cdot \ldots \cdot\frac{2}{m+n-1}\cdot\frac{1}{(m+n)(m+n+1)} \end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\underline{\ \frac{m!\ n!}{(m+n+1)!}\ }\end{align*}}$
となる。
(3)
条件(ⅰ)より
g(0)=c=0 かつ g(1)=a+b+c=0
なので、
g(x)=ax2-ax=-ax(1-x)
と表すことができる。
また、条件(ⅱ)より、0<x<1において、
f(x)≦g(x) ⇔ xm(1-x)n≦-ax(1-x)
⇔ xm-1(1-x)n-1≦-a
となるので、xの関数F(x)を
F(x)=xm-1(1-x)n-1 (0≦x≦1)
とおくと、
F(x)の最大値≦-a
であればよい。
(ア) n=1のとき
F(x)=xm-1
となり、0≦x≦1では単調に増加するので、
F(x)max=F(1)=1
⇔ 1≦-a
(イ) m=1のとき
F(x)=(1-x)n-1
となり、0≦x≦1では単調に減少するので、
F(x)max=F(0)=1
⇔ 1≦-a
(ウ) m≠1 かつ n≠1のとき
F(x)=xm-1(1-x)n-1
(1)と同様に考えると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf F(x)_{max}=F\left(\frac{m}{m+n}\right)=\frac{(m-1)^{m-1}\ (n-1)^{n-1}}{(m+n-2)^{m+n-2}}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \ \ \Leftrightarrow\ \ \frac{(m-1)^{m-1}\ (n-1)^{n-1}}{(m+n-2)^{m+n-2}}\leqq -a\end{align*}}$
一方、(ア)~(ウ)いずれの場合も a<0であり、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf g(x)=a\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{a}{4}\end{align*}}$
となるので、0≦x≦1における最大値は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf M(a\ ,\ b\ ,\ c)=g\left(\frac{1}{2}\right)=-\frac{a}{4}\end{align*}}$ .
よって、(ア)、(イ)の場合、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf M(a\ ,\ b\ ,\ c)=-\frac{a}{4}\geqq \frac{1}{4}\end{align*}}$
(ウ)の場合、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf M(a\ ,\ b\ ,\ c)=-\frac{a}{4}\geqq \frac{(m-1)^{m-1}\ (n-1)^{n-1}}{4(m+n-2)^{m+n-2}}\end{align*}}$ .
以上より、M(a,b,c)の最小値は、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf M(a , b , c)_{min}=\left\{ \begin{array}{ll}\sf \frac{1}{4} & (\sf m=1\ or\ n=1) \\ \sf \frac{(m-1)^{m-1}\ (n-1)^{n-1}}{4(m+n-2)^{m+n-2}} & (\sf m\ ,\ n\ne 1) \\\end{array} \right.\end{align*}}$
(4)
(1)より、0≦x≦1において
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf f(x)\leqq f(x)_{max}=\frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\end{align*}}$
が成り立ち、等号が常に成り立つわけではないので、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \int_0^1\ f\ (x)\ dx<\int_0^1\frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\ dx\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \ \ \Leftrightarrow\ \ \frac{m!\ n!}{(m+n+1)!}<\frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\end{align*}}$ ←(2)より
両辺>0より逆数をとると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \underline{\ \frac{(m+n+1)!}{m!\ n!}>\frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n}\ }\end{align*}}$
一方、(3)の条件(ⅱ)より
f(x)≦g(x)
⇔ f(x)max≦M(a,b,c)min
なので、m、n≧2のときは、(1)、(3)より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\leqq\frac{1}{4}\cdot\frac{(m-1)^{m-1}\ (n-1)^{n-1}}{(m+n-2)^{m+n-2}}\end{align*}}$ .
ここで、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m,n}=\frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}\end{align*}}$
とおくと、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m,n}\leqq\frac{1}{4}\ J_{m-1,n-1}\end{align*}}$ .
同様に、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m-1,n-1}\leqq\frac{1}{4}\ J_{m-2,n-2}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m-2,n-2}\leqq\frac{1}{4}\ J_{m-3,n-3}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \vdots\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m-n+2,2}\leqq\frac{1}{4}\ J_{m-n+1,1}\end{align*}}$
であり、これらを辺々かけると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m,n}\leqq\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}\ J_{m-n+1,1}\end{align*}}$ ・・・・(※)
となる。
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m-n+1,1}=\frac{(m-n+1)^{m-n+1}\cdot 1^1}{(m-n+2)^{m-n+2}}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{m-n+2}\left(\frac{m-n+1}{m-n+2}\right)^{m-n+1}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{m-n+2}\left(1-\frac{1}{m-n+2}\right)^{m-n+1}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf <\frac{1}{2}\cdot 1^{m-n+1}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf =\frac{1}{2}\end{align*}}$
なので、(※)より
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf J_{m,n}<\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}\cdot\frac{1}{2}\end{align*}}$
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \ \ \Leftrightarrow\ \ \frac{m^m\ n^n}{(m+n)^{m+n}}<\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}\cdot\frac{1}{2}=\left(\frac{1}{2}\right)^{2n-1}\end{align*}}$ .
両辺>0なので、逆数をとると、
$\scriptsize\sf{\begin{align*} \sf \underline{\ \frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n}>2^{2n-1}\ }\end{align*}}$
以上より、題意は示された。
一番最後の処理が少し難しいかもしれません。
テーマ:数学 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2018/11/16(金) 01:06:00|
- 大学入試(数学) .関東の大学 .東京医科歯科大 2013
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